「つくる」を考え続けてきた私たちの本音 ディレクターやデザイナーとして考える今とこれから
プロジェクトメンバー
- 吉岡沙織(free web hope inc.)CREATIVE DIRECTER
- 田上聖(free web hope inc.)WRITER
東京と大阪。ディレクターとデザイナー。
活躍する場所や会社、ポジションは違えど、ディレクションやデザインを通じて「つくる」と向き合ってきた3人がここにいます。
「私たちはなぜ、ディレクターやデザイナーになったのか?」
「日々のなかで何を考え、何を意識して行動しているのか?」
さまざまな話から見えてきたのは、変わらない本質と未来に対する決意でした。
今回は株式会社free web hope、株式会社スピッカート/spicato inc.のスペシャル対談の様子をお届けします!
登場人物
・吉岡沙織
営業職や広告会社を経て、2021年に株式会社free web hopeへ入社。クリエイティブディレクターとして、ブランディングやコピーライティング、情報設計などのさまざまな領域におけるディレクションを担当。
・前川ひろみ
工場の事務員を経て、2015年に株式会社スピッカート/spicato inc.へ入社。デザイナーからディレクターへジョブチェンジ後は、ディレクターとコピーライターの二刀流。企業の商品やサービスに関わるブランディングも得意とする。
・井上侑子
2016年に株式会社スピッカート/spicato inc.へ新卒入社。デザイナーとして、Webサイトをはじめ、ロゴやパッケージなど、さまざまなデザインおよびイラストを担当。「気持ちいいデザイン」を日々探求中。
はじめまして!私たちの出会い
みなさんの出会いのきっかけは何ですか?
吉岡:spicatoさんとの出会いは2021年、私がfree web hopeに入社した直後のことです。自社サイトのリニューアルを任され、いろんなサイトを参考にしていたんですよ。そのときに目に留まったのが、spicatoさんが手がけたサイトでした。見た瞬間「これだ!」と、もう迷わずすぐ連絡させてもらいました。「この人たちと仕事がしたい!」と思って。
*吉岡沙織
前川:そんな背景があったんですね!当時、吉岡さんからいただいたメールにお返ししたのが私だったんですよ。free web hopeさんのことは以前から知っていて、「カッコいい人たちが揃っている会社」という印象を持っていました。
しかも、東京の会社からのご依頼ということもあり、はじめはspicato内でもいい意味でドヨメキがあったんです。「え!?あのfree web hopeさんから依頼が来た!!」って笑。
*前川ひろみ
井上:free web hopeさんに対しては、私も前川と同じ印象を持っていました。ご依頼に、はじめは私も驚きましたが、スゴい方々と一緒に仕事ができる喜びのほうが大きかったです。
*井上侑子
吉岡:今でこそ違いますが、当時のWeb制作業界は東と西で分かれている印象で、東京の会社が大阪の会社に依頼することってほとんどなかったと記憶してます。依頼メールを送らせてもらったときは、まったく気にしていませんでしたが、たしかにビックリしますよね笑。
話してはじめて気づくお互いのこと
お互いにどのような印象をお持ちですか?
井上:とにかく吉岡さんはスゴい人というイメージがあったんです。でも、実際にお話しするとすごくフランクで、話しやすさに親近感が湧きました。
前川:吉岡さんのことは、ご依頼前からTwitter(現在のX)で知っていたんです。代表の細尾が「この人スゴいよ」と教えてくれて。
「めっちゃクールでカッコいい人や!」と私も思いつつ、一緒に話していて吉岡さんがニコッと笑ってくれたら、こっちまで嬉しくなるみたいな。そういうやさしい雰囲気もまとっている方だなと感じてますね。
吉岡:前川さんや井上さんを含め、spicatoのみなさんは、いい意味で私と異なる視点を持つ存在だと感じています。それは、それぞれ置かれてきた環境や吸収してきたものが違うからこそ、私がまだ見たことのない世界を見させてくれるのではないかとワクワクしたんです。
ディレクターやデザイナーとしての職人的なこだわりを持ちながらも、「このプロジェクトを楽しんで一緒に作っていきましょうね」みたいに、自然と寄り添ってくれる方々だなって。批判的思考がなく、すべてを肯定的に包み込んでくれるようなイメージ。
あと、人柄の話をすると、たとえば手紙にそっと手書きの絵が添えられていたり、日常的にさりげない小さなサプライズを演出したりできるようなステキな方々ですね。
「つくる」立場になった私たちのはじまり
ディレクターやデザイナーになるきっかけは何でしたか?
吉岡:私がディレクターになったのは、実はまったくの偶然で。もともとは飲食業や法人営業をやっていて、そのあとご縁があって前職の広告会社に入ったんです。入った当時はね、コピーライティングもデザインも、マーケティングの知識だってほとんどなくて、正直お手上げ状態でした笑。
自分の理解不足で叱られたり、つらくて泣いたりもしたんですけど、クライアントさんやパートナーさんに感謝されることも日に日に多くなって、だんだんと楽しいなぁって。
気がついたら「あれ?この仕事、案外自分に合っているかも」と思うようになって。そんなふうにして今に至る、っていう感じですね。
前川:学生の頃から絵を書くのが好きでしたが、高校を卒業後は別の仕事に就いたんですよ。
でも、やっぱりデザイナーになるっていう気持ちを諦めきれなくて……デザイン会社を探すなかで、たまたまspicatoを知ったんです。サイトデザインのかわいらしさに惚れ込み、今思うと本当に熱意を勢いだけでしたが、未経験ながらデザイナーとして入社しました。
井上:後輩目線になりますが、前川はとにかくガッツがスゴいんです。何事にも全力で向き合ってやり続けるスタイルは、私が入社した当時も今も変わらず、ずっと尊敬する先輩です。
前川:ありがとう。でも、当時はデザイナーとしてのキャリアアップに不安がありました。とにかく経験が浅いし、伸び悩みとか努力の限界を感じていたんです。
そんなとき、代表の細尾が「前川はディレクターも向いていると思うよ」と提案してくれて、コピーライティングの講座を受けさせてもらいながら、少しずつディレクターにシフトして今に至ります。
井上:前川のコピーライティングは、空気感が言葉でうまく表現されていて、デザインを考える際のアイデアの幅を広げてくれているんですよ。
前川:そう言ってくれて本当に嬉しい。実は、井上はspicatoで初めての新卒入社なんです。
吉岡:あ、そうだったんですか?
井上:そうなんです。就職活動では地域に関わるデザインをしたいと思っていたんですけど、そのなかでspicatoに出会いました。大学ではデザインも学んでいましたが、「イラストが好き」というのが私の原点なんです。
「イラストとデザインの両方を活かすことができる会社」という点が、私にとって理想的で入社を決意しました。
前川:そうだったんだね。私がデザイナーだった当時は、お互いに車や徒歩通勤だったので、井上と二人で「今日何時まで頑張る?」みたいな感じで納期と戦っていたのは、今となってはいい思い出です笑。
吉岡:電車通勤ではないからこそのあるあるですね笑。
「つくる」ために私たちが考えていること
ディレクションやデザインでは何を意識していますか?
吉岡:お二人は私のことをフランクだと思ってくださっているみたいですね。ほんと、ありがたい限りです。クライアントさんやパートナーさんと同じ視座で話をしたくて、自然とこういうスタンスになりました。そうすることで、本音の部分にまで踏み込んだ話ができるんですよね。もちろん、そのための下準備も大事にしています。
そして、そのブランドやクライアントさんの人格になりきることも、私が常に意識していることです。全体からクライアントさんがまだ気づいていない課題を見つけ、一緒に解決する姿勢も大切です。
前川:今のお話は私も共感しかないです。私も目の前のクライアントさんは何が好きなんだろう?何に興味を持っているんだろう?と考え続けながら、お話しするように心がけています。
井上:デザイナー目線からだと、クライアントさんの「価値観」や「思考」に自分をリンクさせ、無限の組み合わせからデザインを考えていくんです。たとえば、デザインに行き詰まったときは、クライアントさんやターゲットになるユーザーさんの姿を思い浮かべるとか。
「あの方ならどっちが好きかな?」を考えると、みんなが満足するデザインを生み出せる気がしますね。
私をつくる日々の習慣
ディレクターやデザイナーとして心がけている習慣はありますか?
井上:私はInstagramのストーリーを中心に、ステキだなと思える国内外のデザイナーさんのアカウントをよく見ます。デザインもですが、動きのあるアニメーションも、デザインをするうえで自分の思考の幅が広がるきっかけになるんですよね。日々のデザインにも活かせるように、日常的にストックするようにしています。
前川:日々のインプット……そうですね。私はコピーライティングも担当してるので、言葉の部分だと本から得るものもありますが、最近はXでいいなぁと思うポストがあればブックマークして、あとから見返すことが多いです。
あとは音楽ですね。歌詞って言葉の力を感じると思いませんか?胸が熱くなったり、ホロリと涙したりとか。キャッチコピーを考えるうえで、とても参考になるんですよ。
「このクライアントさんや会社を音楽で表すとしたら、どんな音楽が合うんだろう?」と想像しながら、リズムを意識した言葉選びやサイトの見せ方を考えていくんです。
吉岡:リズム!おもしろい視点ですね。言われてみるとたしかに、spicatoさんのサイトからは音楽のような心地よさを感じます。そんなリズム感のあるデザインやコンテンツを作り出す。
それがspicatoさんの強みの1つなのかもしれませんね。
私の習慣では、デザインだと美術館に足を運んだり、デザイン本やグラフィックデザインを参考にしたりしています。コピーライディングではとにかく「メモ」ですね。歩いていて目についた言葉とか、人の会話を聞いていて「おっ、これはおもしろい」と思ったら、すぐにスマホにメモするんです。
あと、読書も大事なんですが、最近は「映画」を見るようにしていますね。
井上:映画ですか?
吉岡:仕事のことばかり考えていると、どうしても視野が狭くなっちゃうんですよね。ビジネスだらけになった頭をリセットするのに、映画は効果的で。好きな作品も見ますが、普段の自分だったら絶対に選ばない作品をあえて見るようにしてます。
たとえば……そうですね、自分が全然共感できないような作品でも、世の中のトレンドになっているものがありますよね?そういう作品を見るときは、「なぜこれが人気なんだろう?」って考えながら見るんです。
なので、映画上映中に私以外の周りが泣いているとかもあって、そういうときは「ああ、ここでみんな感動してるんだな」って思いながら見てます笑。
前川:なるほど。自分の感覚との違いに気づくのは大切ですよね。たとえば、地元の友達と話すとか。自分がいる業界以外の話を聞くと、まだまだ知らない新たな発見がたくさんあって、思考の偏りをリセットできるような気がしますよね。
井上:「自分の感覚との違いに気づく」という話で思い出したのが、2歳になる私の子供とのエピソードです。最近、一緒にミニトマトを収穫したんですけど、切った枝から水が滴るのを見て、「えんえんしてるね」って言ったんです。枝から水が滴る様子を「泣く」と表現することには驚かされました。子供の思いがけない発想を目の当たりにして、本当に学びになるなって思いました。感性がステキだなって。
前川:えぇ~かわいい!
吉岡:ステキなエピソードですね!
大変なことを乗り越えてきたから今がある
仕事をするなかで大変だったエピソードはありますか?
前川:「大変だった」で忘れもしないのは、冊子を作ったときのことですね。1万部を超えるくらいの量が必要で、いつもの印刷会社さんにお願いしたところ、すでに他の依頼で受けるのが難しいと言われてしまい……
でも、納期は迫っているし、新たな印刷会社さんも探さないといけない。無事に納品はできましたが、予測不能な事態が起こる危うさには本当に焦りましたね。
吉岡:それは本当に忘れられないことですよね。あと冊子だと、色の絶妙な違いや誤字脱字も怖くありませんか?私も過去に経験があるのですが、印刷や製本を終えて、完成した見本が手元に来るまで、中身が本当に合っているかどうかドキドキしていたのを覚えています。
井上さんはどうですか?
井上:これは私がまだ社歴が浅かった頃の話です。デザインが納得のいくクオリティーに達していないなかで期限も迫っていたので、現時点の最終案を代表に提出したんです。
すると翌日、代表から「直しておいたよ」と言われ、代表が手直ししたデザインがスムーズに進んでいったのを見て、とても悔しかったのを覚えています。
前川:でも、そこから井上が努力を重ねて、メキメキと力をつけていく姿を私は近くでずっと見てきました。今ではもう「井上にデザインを任せたら間違いない」というレベルですし、デザインの調整が必要なときは、最後まで向き合ってくれるんですよね。
デザインを突き詰めて考え、粘り強く取り組んでくれる姿勢は、ディレクターとしてありがたいなといつも思っています。
吉岡:長く一緒に仕事をしてきたからこそ、お二人は信頼し合っているんですね。
私が覚えている大変だったエピソードは、まだディレクター1年目か2年目の頃。仲の良いクライアントさんとやり取りをしているとき、電話越しに「もう、よっぴの話は聞きたくない!」って言われてしまったんです。
前川/井上:えぇー!そんなことがあったんですか!?
吉岡:そうなんです汗。しかも、打ち合わせ30分前という絶妙なタイミングで……
あ、実は私、吉岡という名字よりも、「よっぴ」とあだ名で呼ばれることのほうが多いんです笑。
前川/井上:そうだったんですね。それで、そのあとはどうなったんですか?
吉岡:打ち合わせや納品もできたんですけど、当時は自分が相手からそういうことを言われたときに、うまく対処する術を持っていなくて動揺しましたね。やっぱり、今も頭に残っている印象的なエピソードの1つです。
前川:納得できないこともあるけれど、耐えて納品まで持っていく姿勢も、我々ディレクターには大切なのかもしれないですね。
「人」が本質であることはずっと変わらない
ディレクションやデザインで、これからも変わらないことって何ですか?
吉岡:AIの登場と発展は脅威的ですけど、それでも「人とのつながり」は一生変わらないかなと思ってます。だからこそ、これからはその方が持つ「人間性」も大事になるんじゃないかなって。
前川:わかります。AIをうまく活用したうえで、自分や会社のスタンスを出していくことも大切になりそうですよね。ただ、ここ最近はAIの発展スピードが速すぎて、情報収集が大変です。
井上:AIというと、デザイナーのほうが淘汰されるんじゃないかという心配が強いです。でも、私も吉岡さんと同じで、人は変わらないと思います。人とAIの違いは「感情の有無」じゃないかな?
そう考えると、デザイナーとして、人の感情に寄り添うようなデザインの重要性は、これからどんどん増す気がしますね。
私たちのこれから
今後の目標をお聞かせください
吉岡:これまでを振り返ると、はっきりとしたロールモデルはなかったんですよね。コピーライティングもディレクションも、全部手探りでした。でも、入社した頃からすごく恵まれていたと思います。すばらしいクリエイティブディレクターさんやアートディレクターさん、そしてプロデューサーさんにマーケティングの基礎を叩き込まれて、今の自分があるんです。
ありがたいことに、その方々が「歴史」や「哲学」にも詳しかったことで、自然と教養が身につきました。
今は「経営学」や「心理学」など、もっと幅広く学んでいきたいんです。クリエイティブとビジネス、この2つの融合を図りたいんですよ。両方の視点を持ち、橋渡しができる人材になる。これが私の目標ですね。
前川:個人的にですが、free web hopeさんや吉岡さんと関わるなかで、「スピード感や数字の重要性」を学ばせてもらいました。
クライアントさんによっては、それらの要素を重視しているケースもあると思うんです。もっとクライアントさんの視点を大切にしながら、spicatoのエッセンスを加えて、ディレクターとしてレベルアップを目指したいです。
吉岡:そうおっしゃっていただけて嬉しいです。でも、spicatoさんらしさは消えてほしくないなぁ。
前川:もちろん、spicatoの根にある「人の手のぬくもりを感じるデザイン」は大前提ですね。そのうえで、スピード感や数字にも意識を向けながら、spicatoらしさを追い求めていこうと思っています。
井上:デザインにおいて、AIの存在を無視できない時代になりました。それでも私は、昔から今もこれからも、デザインがずっと好きなんだと思います。自分ができる100%を120%にしていく。常に自分を超えていくことが、これからの未来につながっていくと感じています。
未来のために今と向き合って、これからもデザインを続けていこうと思いました。
吉岡:東京と大阪、離れた場所にいる私たちですが、お互いにこれからも頑張っていきましょう!
前川/井上:ぜひこれからもよろしくお願いいたします!
編集後記
ディレクターやデザイナーとしてのはじまり、これまでの歩み、考えや日々の習慣などは、3人それぞれ異なります。ただし、つくるという本質に「人」の存在があることは、3人とも共通しています。
ディレクションを通じて、クライアントさんやパートナーさんと向き合い、見る人の感情に訴える心地いいデザインを考える。どの過程にも人が必ずいます。
AIをはじめとする技術がどれだけ発展しようとも、これらの本質はずっと変わらないのかもしれません。プライドを持ってこだわり続けてきた3人だからこそ、人という本質を見失わずに、Webサイトやデザインに多くの価値を生み出し続けられているのです。
株式会社スピッカート/spicato inc.さまの公式サイトは、下記の画像またはリンクをタップしてご覧ください。
https://spicato.com/
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