「語れるビール」をつくることが、いちばんの戦略だった。
"商品と向き合うことで見えてきた、
KOBUSHI BEERのブランドづくり"
井上裕介×吉岡沙織×榊はるか×大野洋佑
渋谷・道玄坂。その一角に、少し変わったクラフトビールがある。
醸造するのは新潟。飲むのは渋谷。その距離を、KOBUSHI BEERは一本の瓶でつなぐ。黒糖の甘みと深い余韻を持つストロングペールエールは、単においしいだけではない。このビールを手にした人は、なぜか誰かに話したくなる。サイトには、こんな言葉が置かれている。
「飲みたいときが、できたてです。」
この一行に辿り着くまでに、何があったのか。渋谷道玄坂を拠点に1万人超のネットワークを誇るKOBUSHI BEERコミュニティを主宰する井上裕介氏と、free webのクリエイティブチームが、語り合った。

話した人——
吉岡沙織(左)free web クリエイティブディレクター
榊はるか(左から2番目)free web デザイナー
大野洋佑(左から3番目)free web エンジニア
井上裕介(右)KOBUSHI MARKETING 代表
1. コミュニティの熱量を、どう「オンライン」へ拡張するか
井上:ありがたいことに、コミュニティのなかでは、「KOBUSHIといえばビール」という共通認識が自然とできていて。国内だけでなく、海外の方からにご来店いただけることも増えてきました。そこでオンライン販売を本格的に考えはじめたとき、LPが必要だなと思ったんです。
私が運営しているコミュニティは、参加費や会費をいただく形で、約5,000人の熱量の高いメンバーが集まっています。ただ、その熱量をオンラインへどう広げていくかが悩みどころで。そこでfree webに声をかけました。
吉岡:中にいる人には当たり前のことが、外から来た人にはまったく見えない。それをどう見えるようにするかが、まず最初の話でしたね。
井上:ターゲットは明確で、渋谷、IT系、酒好き。全員に好かれなくていい。むしろ、嫌いな人には届かなくていい。特定の人たちが熱狂して、その勢いのままに手を伸ばしてくれればいいと、考えています。コミュニティの究極の形って宗教に近いと思っていて、熱量のない人を入れると純度が下がる。広げることより、熱狂の密度を守る方が大事なんです。


2. 無形商材に「味」を持たせ、記憶に刻む
吉岡:そもそも、なぜビールだったんですか。
井上:コミュニティって、本来、形がないじゃないですか。スポーツチームにコミュニティがつく例はありますが、ビールにコミュニティがつく例はほとんどない。でも「一緒に飲む」という行為を通じて、コミュニティを五感で体感してもらえる。それが強みになると思ったんです。
「味」って、マーケティングの中で最も代替が難しい要素だと思っていて。キューピーのマヨネーズがいい例で、一度これだと思った味は記憶に深く刻まれる。ブランドスイッチが起きにくい。だから早い段階から、視覚的な独自性も一緒に作り込んでいたんです。
吉岡:そんな風にビールという商材を考えたことなかったですね。今回は、お声かけいただいたときから、オンラインで飲食商材を扱う難しさも頭にあって。クラフトビール市場では「美味しい」はもう前提で、その上でどう指名買いを生むか。味の記憶とデジタル上での動線や表現をどう結びつけるかは、難しいなあと思っていました。

3.「つい誰かに話したくなる」という、ストーリーの設計
吉岡:オリエン後、クラフトビール市場と、新潟の醸造について、まずひたすら調べました。そのなかで知ったのが瓶内発酵という製法で。酵母が生きたまま瓶に封じ込められて、ビンの中で発酵が続いている。調べれば調べるほど、このビールには語れる事実があるなと思いました。
そこからコンセプトを3つ考えました。酵母が生きているという生命感を出す「命のクラフトビール」。醸造家だけが知る鮮度を伝える「まかないビール」。もう一つは少し方向が違って、言葉じゃなくジェスチャーで表せないかと。拳と拳で乾杯する、フィスト・バンプのイメージです。
井上:「まかないビール」の鮮度感には惹かれましたが、言葉として少し弱い気がして。店頭でビールを飲む体験の良さって、出来立て、飲みたてだと思ってて。このビールはそれを、家庭でも再現できる。開けた瞬間が一番フレッシュな状態で飲めるのがKOBUSHIの特徴なんです。
吉岡:それで新しく模索し「生きているビール」と「タンク直ビール」というコンセプトを作成しました。とはいえ、「命」という言葉はビールを愉しむ場には重すぎる。「タンク直」は家庭用ビールサーバーみたいな誤解を招く。本来伝えたいフレッシュさが、言葉の選択によって別の意味にすり替わってしまうので、視点を変えて、瓶内発酵をそのまま語るんじゃなくて、グラスに注いだ瞬間の気配、一口目と最後の一口で表情が変わるあの体験へ変換する。生きているという感覚とフレッシュさを、一行の中に。そこから生まれたのが「飲みたいときが、できたてです。」です。
井上:渋谷のバーで以前体験したビールが、私の原体験としてあります。そこも瓶内発酵していて、一口目と最後で味が変わるというのをウリにしていた。「飲みたいときが、できたてです」を見たとき、あの感覚がそのまま言葉になったと思いましたね。

4.スタイリッシュさと本格感を、一枚の画面に共存させる

吉岡:コピーの方向性が見えてきたところで、デザインの話も並行して動いていましたよね。榊さんは最初、どこから考えはじめたんですか?
榊:本格的なブルワリーとしての信頼感と、渋谷のストリート感をどう共存させるか。相反するこの二つを、どうひとつのデザインに落とし込むのかが最初に考えたことです。
最終的には4つの方向性を考えました。ビールタンクを無機質に切り取る、工業・研究的なアプローチ。新潟と渋谷のギャップを差し色で表現するストリート寄りの案。注ぎたての瞬間を捉えたシズル感重視の案。そして、職人の手の温もりを感じさせるクラフト感の強い案です。

井上:どの案にも捨てがたい魅力がありましたが、最終的にスタイリッシュな構図と温かみのある本格感、この2つのエッセンスにまで絞り込みました。
榊:渋谷の混沌とした雑多さと、新潟の醸造所が持つ静けさ。一見まったく違うこの二つが本当に共存できるのか、正直まだ不安はありました。でも方向性が見えたことで、ようやく手を動かせる気がしました。
5.外は牧歌的、中は研究室。新潟の醸造所で見えた、ブランドの核
吉岡:方向性が見えたところで、実際に新潟の醸造所を訪ねてみました。調べていたことの答えが全部そこにあったと感じました。巨大なタンクが並び、新米のような香りが漂って。工場というより、工房でした。宇佐美社長にインタビューして思ったのは、かなりストイックで、研究者だということ。毎日2.5リットルのビールを飲み、スポイトで実験を繰り返しているらしく、
「熱殺菌も、濾過も、炭酸注入もしない。それをすると雑菌は消えるけれど、旨味も消えるから」
「コップに半分残った、ぬるくて炭酸の抜けたビール。それでもおいしいと思えますか。私たちは、すべてのビールをその状態でテイスティングして、おいしければ商品にしています」
といったことを仰っていて。余計なものを足さなくていい、これをこのまま伝えようと思いました。
榊:現地に行くまでは黄金色の稲穂や青い空という新潟のイメージに引っ張られて、少し戸惑いがあったんです。
でも一歩足を踏み入れると、無菌室のような静謐さと無骨さが同居していた。その強烈なギャップを見た瞬間、提案していたスタイリッシュかつ本格的という方向性が、まさにこの場所そのものだったんだと思いました。
KOBUSHIでビールを注いでもらったときの「プシュッ」という音や、立ち上がる香りの生命感。あの五感を揺さぶる瞬間をアニメーションで表現したいという挑戦心も、この現場の空気から授かったものです。
井上:工場の中は、まさにラボ。渋谷のベンチャー企業のオフィスに近い空気感が、驚くほどあるんです。そのストイックな姿勢は、私たちのコミュニティが大切にしている挑戦の姿勢とも深く通じ合っている。それを改めて現地で感じましたね。


6.ビールの役割を説明ではなく、空気感で伝える
吉岡:シーン撮影もよかったですよね。出演者は私の友人を中心に集めたメンバーで、初めましてだったのに、バーのようなラフな雰囲気で撮れて楽しかった。
榊:渋谷と新潟の異色タッグ、できたてらしさ、ディープさと気軽さの混ざり合い。この三つを軸に考えていました。乾杯一つとっても、大勢でグラスを重ねるシーンと、瓶をそっと合わせるだけの小さな乾杯とでは、空気がまったく違う。その違いを意識しながらシーンを積み重ねていきました。





榊:ビールを主役にしすぎないことが大事で。「飲んでいるだけで、友達ができる」というKOBUSHI BEERのコンセプトを、説明ではなく写真に宿る空気感で語りたかった。ビールは人のそばにさりげなく添えられているくらいがちょうどいいかなって。
井上:あの写真の雰囲気は、コミュニティの現場に近かったですよ。KOBUSHI BEERはまさにああいう場を実際に提供しているので、初めて会った人同士が、ビール片手にいつの間にか打ち解けている。説明なんてしなくていいんですよね。
吉岡:構築はなかなか苦労してたよね。大野くんの葛藤を横で見てたんだけど、改めてどうだった?
大野:榊さんからデザインの意図を受け取るんですが、言葉だけでは全部は伝わらないんですよね。ピクセル単位になると感覚の話になってくる。デモを何パターンも出して、「これは惜しい」「これは近い」という会話を繰り返していました。でもその往復の中で、ああ、こういう感覚を目指していたのかと気づく瞬間がありましたね。
榊:大野さんが諦めずに出し続けてくれたから、最後にこれだと言える瞬間が来た。あの粘りがなければ、「プシュッ」の瞬間はあそこまで表現できなかったと思っています。
大野:AIを活用して開発効率は上げていましたが、感性に訴えるアニメーションの部分だけは別でした。0.1秒の差でビールの気配みたいなものが変わってしまう。最後の「心地よさ」という正解のない領域は、2週間で40種類のデモを作り続けるしかなかったですね。悔しい思いもしましたし、当初とは違った構築にはなったけど、たくさん検証した結果はありました。
07.成果物付きのコンサルフィーとして、free webを使い倒してほしい
井上:正直に言うと、free webさんはダイレクトマーケティングのプロとして、テクニカルな議論が中心になるだろうと予想していたんです。でも蓋を開けてみればそこにあったのは、商品の本質を正しく訴求し、ブランドを共に育てていくという、ブランドマーケター本来の仕事でした。
売れる・売れないの勝負は、画面上ではなくその前の段階で決まっている。
今ではこのサイトが、KOBUSHI BEERの名刺代わりになっています。「どんなビールですか?」と聞かれれば、URLを一発送るだけで説明が完結する。ブランドの輪郭が言葉とビジュアルで明確になったことで、私たちの想いが正確に伝わっていく。満足度で言えば、300パーセントです。

吉岡:ありがとうございます。でも私たちとしては、特別なことをしたつもりはなくて。作る側が頭の中でイメージできていないのに、相手に伝わるわけがないじゃないですか。自分たちが商品をしっかり知って、誰にどう届けるかを考える。腕の見せどころって、実はそこだけな気がしています。
井上:これを読んでいる方にも率直に伝えたいことがあります。特にBtoBのサービスやSaaSをやっている方には、free webへの依頼をブランドマーケティングの研修費だと思って試してみてほしい。一枚のLPに凝縮するとき、何を残して何を捨てるかを議論すること自体が、経営判断そのものなんです。その純度を上げていくプロセスに、free webは伴走してくれた。成果物付きのコンサルフィーとして捉えてもらえれば、圧倒的にリーズナブルだと思っています。
大野:その表現、いいですね、嬉しいです。自分たちがやっていることをそんなふうに言葉にしてもらえると、改めてやっていてよかったなと思います。
吉岡:今回、井上さんと一緒にKOBUSHI BEERと向き合ったことで、私たち自身もそのことを実感しました。語れるものをつくること。それが結局、いちばんの仕事だったと思っています。

(対談おわりに...)
吉岡:ちなみに、井上さんはここがお気に入りのところってあるんですか?
井上:どこかひとつというより、LPとしての流れがいいんですよね。この順番、この流れの心地よさが、このサイトの良さだと思っています。
吉岡:お、うれしい。(照)

編集後記
「語れるビール」をつくること。それは、新しい物語を付け足す作業ではなかった。
新潟の醸造所で静かに流れていた時間。ぬるくなっても損なわれない美味さ。そして、誰かと誰かが出会うきっかけになること。そのビールがもともと持っていた事実を、ただ丁寧に、あるべき場所へ整えていく。一行の言葉や、一秒の動きの中に、その気配をそっと置いていく。
結局のところ、良いものを、良いままに伝えること。それ以上に強い戦略など、どこにもないのかもしれない。このビールが、誰かの「実はね」という会話を誘い出す。その瞬間をつくること。それが、私たちがこのプロジェクトで見つけた答えだったのではないだろうか。
■関連サイト
KOBUSH BERR LP(今回制作したLP)
KOBUSHI MARKETING合同会社
KOBUSHI BEER
イベント・セミナー・交流会
KOBUSHI MARKETINGの顧客事例
KOBUSHI BEER 通販サイト
KOBUSHI BEERコミュニティ
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