「その人らしさ」を大切にするカルチャーを採用力に変える

Beeミュージックスクール
  • #BtoC
  • #人材・採用

"人柄で勝負する"
根本愛×吉岡沙織

東京で16年にわたって音楽スクールを運営するBeeミュージックスクール。生徒数増加に伴う講師採用の課題と、企業文化を求職者に伝える難しさを抱えていた同社が、free web hopeとの協働で「その人らしさ」を重視した採用サイトを制作。サイト公開後、応募者からの反応に変化が見られ、カジュアル面談への関心も高まった。企業文化を採用力に変えた手法を、プロジェクトに携わった二人が振り返る。

話した人
左:吉岡沙織 free web hope クリエイティブディレクター/ブランディングプロデューサー
右:根本愛 Beeミュージックスクール 採用担当(2015年入社、講師から採用業務へ転向) 


1. 事業拡大期に直面した採用の課題

── 今回の採用サイトリニューアルは、どのような課題からスタートしたのでしょうか?

根本: 元々一番大きなきっかけは、代表の鮄川がこのタイミングでリブランディングしたいという意向でした。今まで使っていたものは結構前に作ったもので、情報を都度アップデートしながら使っていたという感じだったんです。
今のご時世に合わせたデザインや使いやすさをアップデートしたいということと、コロナ以降、ありがたいことにお客様もどんどん増えていて、オンライン事業やサテライト事業もどんどん形にしていこうという時期だったので、採用って本当に重要だねということを社内でも大きく感じていました。

── 採用面でも具体的な課題があったということですね。

根本: そうですね。応募数の減少傾向があったのと、社内にそこまで専門知識があるスタッフもいなかったんです。それまでの採用サイトは、必要な時だけ業者さんにお願いをするとか、文言だけ変えるみたいなアップデートの仕方をずっとしていました。そうではなくて発信する内容をどんどんアップデートしたいというところで限界を感じていたんです。
そこで、お客様用サイトですでに関わりがあるfree web hopeさんにお願いするのはどうかという話になりました。社内のことを理解してくれて、並走してくださることに安心感を感じていました。

2. 徹底したヒアリングで「らしさ」を可視化

── 初回ミーティングはいかがでしたか?どのようなヒアリングを行ったのでしょうか?

吉岡: 課題感の前に、スクールの成り立ちを中心にヒアリングしていきました。その中で、鮄川代表から聞いた、音楽などの「アートの優位性」が特に印象に残っています。
例えば、戦争や災害があった場合、欧州などでは復興時にまず劇場を作るそうです。人々の暮らしの中で「音楽がいかになくてはならないもの」なのかという熱意が強く伝わってきたエピソードでした。

── その後、講師の方々にヒアリングされたのですか?

吉岡: はい、そうです。代表の方も含めて、スタッフの方もインタビューさせていただきました。特に採用においては、人柄が結局大事になってくると思い、そこが伝わらないと入った時にもギャップが出ちゃうと思っているので、ちゃんとヒアリングした上で、それが具体化してコピーだったり、デザインだったりに落とし込みたいなと思いました。Beeさんの講師は人気講師ばっかりなので、その秘訣も含めて、皆さんの声をしっかり聞きたいなと思いお話を伺いました。

── 吉岡さんはめちゃくちゃ聞きますよね。

根本: 聞きますよね。(笑)
吉岡: そんな聞く量を意識したことはないですけど、聞くんだと思います。(笑)
根本: 長めのドキュメントをいただいて、たくさんのいろんなことをお答えした記憶があります。それこそ、わたしたちの顧客もそうなんですけど、わたしたちの企業の中身を結構質問していただいた記憶があります。
吉岡: まず自分が完全に素人であるということと、変な深掘りをしない。自分で勝手に解釈をしないで、ちょっとズレてきたなっと思ったら「こういうことですか?」みたいな感じで、勝手に自己解釈せず、確認しながら、まず一次情報を自分の中に受け取るみたいな作業を心がけています。

3. ヒアリングで浮かび上がった「Beeらしさ」

── ヒアリングを通じてどのような発見がありましたか?

吉岡: 現場目線と経営者目線に分けて分析した結果、Beeさんが求める人物像って、講師経験者に限らないよねって見えてきたんです。
講師の方へのインタビューでも共通点が浮かんできて。過去に内気だったり自信がなかった経験を持つ一方で、先生や誰かの一言で自信を得た体験がある。そして今度は自分が誰かを支えたいという想いを持っている。音楽の経歴より人間性を重視する採用方針とも一致していました。
根本: 正直、ヒアリングへの回答はすごく難しかったです。自分たちの会社について言語化できていない部分がたくさんあるんだなと気づいて。でも吉岡さんたちが咀嚼して深掘りしてくれたおかげで、自分たちのことがクリアに見えてきました。


── 戦略はどう立てたのでしょうか?

吉岡: 複雑なことはせず、「だれに」「なにを」を整理しました。
「だれに」は、過去に内気だったり自信がなかったりした経験があるけど、自分が誰かを支えたいと思える人。「自分はこのままでいいのかな」と思っている人。そういう方々にフォーカスしました。
「なにを」は、「ヒト」と「仕事」の魅力の最大化と「会社の安定性」を訴求することで、条件面での弱みをカバーしようと。
最終ゴールは「ここには、私の居場所がある。」と思ってもらうこと。求める人物からの応募を増やして、同時にミスマッチも防ぐ両面効果を狙ったんです。

根本: 根本的な戦略を間違えると採用はうまくいかないって改めて実感しましたね。私たちが発信するべきことが、整理されて嬉しかったです。
それから、提案資料は採用担当チームで本当に熟読しました。なんとなくだったBeeの中にあるマインドがすごくまとめられてて。本来Beeにあるものなんだけど、こうやって可視化されると「確かにこうだよな」って感じました。
頭の中にはあるんですけど、それを言葉や見える形にするのはなかなかできてなくて。目で見て「あ、そう、そう、こういうこと」っていうのって大事なんだなってすごく感じました。
吉岡: めちゃめちゃ嬉しい...!社内の採用資料として活用できるレベルまで整理したことで、採用に関わるみなさんが共通認識を持てるような資料を目指してました。



4. 「ここであなたを奏でよう」—コンセプトコピーの誕生

── コピーはどのように生まれたのでしょうか?

吉岡: パートナーの井口さんと一緒に見えてきたのは、求職者の「自分らしさをキープしたい」という想いでした。
一般的な転職動機って、冒険やチャレンジ、成長への情熱が多いんですが、音楽講師を志望する方々は違っていて。「もっているスキルを活かしたい」「好きな業界に関わりたい」という表面的な動機の奥に、「仕事によって自らを毀損させたくない」「自分の感性を活かして活躍したい」という深い想いがあったんです。
一方でBeeさんが大切にしているのは、ホスピタリティ、スキルより人間性、そしてその人の歩んできた道そのものを受け入れる文化。まさに「技術」ではなく「あなたらしさ」を求めている会社だったんです。
井口さんがこの両者の共鳴点を言葉にしてくれたとき、「ここであなたを奏でようというコンセプトコピーが生まれました。
根本: このコンセプトを聞いた時、本当に「そうそう、これです!」って思いました。音楽好きの情緒的で感情豊かな方々にすごく刺さる表現ですよね。


5. 「あなたらしさ」を中心に据えたデザイン

── デザインではどのような工夫をしたのでしょうか?

吉岡: 「その人らしさ」を大切にするカルチャーや哲学を伝えるべく、「あなた」にフォーカスした写真を中心とするデザインにしました。デザインを考えたのは、DCCinc.の高橋さんです。
それぞれの個性、「あなたらしさ」を発揮できることを伝えるために、広がりを持たせる「発露」をカラフルに表現しました。背景写真をダイナミックに見せることで、より「あなたらしさ」を印象的に演出しています。


根本: はじめて見た時、今の採用サイトに比べてワクワク感がありました!動きもあって、ここに辿り着いた人がサイトの下部まで興味を持って進んでもらえそうです。
カラーや人の表情が全面に出ているのが非常に印象的で、Beeらしさ、人の温かさが伝わるサイトに変わりましたね。このデザインに「ここであなたを奏でよう」が載った時に、「あ、すごい理想だ」って思いました。抽象的なものばかりお伝えしていたような気がするんですけれど、それを形にしてくださったのが本当に素晴らしかったです。


6. 求職者目線のコンテンツ設計とStudio選定

── コンテンツ面ではどのような改善をしたのでしょうか?

吉岡: 求職者目線で「知りたい!」に応えるサイト設計を目指しました。
「3分で分かるBeeミュージックスクール」では、まだBeeを知らない求職者が短時間で会社の全体像を理解できる構成を意識しています。「何をしているのか」「なぜ採用したいのか」「どんな魅力があるのか」「会社は安定しているのか」という順序で情報を整理しました。
会社の課題も正直に開示することで、「隠し事をしない誠実な企業」という印象を与え、「自分でも活躍できそう」と感じてもらえるよう工夫しています。
根本: あえて課題を載せるって、最初はびっくりして質問してしまったのですが、聞いて納得しました。完璧すぎると逆に近づきにくいですもんね。
吉岡: 入社後に働くイメージをしていただけるように、「どんな人が働いているのか」「どんなキャリアが描けるのか」という不安を抱えている人には、「仕事とチーム」というコンテンツで、職種ごとに仕事内容、1日の流れ、キャリアパスをまとめています。実際の業務内容や働き方、チームメンバーについて詳しくご紹介していきました。
根本: ​​最近入社した人に聞いてみたところ、以前のサイトでインタビューを読んだことでスクールの具体的なイメージを知ることができたという意見があったので、それをさらに詳細に載せていただきました。
私たちからも、「これを掲載したらどうか」「こんなことがアピールになりませんか」など、意見を伝えながら、コンテンツの中身を作っていきました。

── Studioを選定した理由は何でしょうか?

吉岡: HTMLやCSSのコーディングが不要だからです。記事の更新以外でも、Studioは直感的に操作できるUIなので、専門知識がない人でも使いやすいという点が大きな理由でした。
根本: 以前は更新するのにも専門的な知識が必要でしたが、今は社内で気軽に情報を更新できるようになりました。
吉岡: 継続的な運用を考えると、クライアント様が自分たちで管理・更新できることは重要ですからね。採用は継続的な活動なので、そのためのツールも使いやすくなければいけないと思います。

7. リニューアル後の変化と今後の展望

── サイトリニューアル後、どのような変化がありましたか?

根本: リニューアルしてから約2ヶ月経ちますが、まず社内のスタッフからの反応が非常に良くて、「すごく変わりましたね」という声を頻繁に聞くようになりました。
求職者からの反応についても明らかに変化があります。熱量を持って応募してきてくださる方が増えているような体感があります。採用サイトのこういうところに引かれました、こういう文章に引かれましたということを自己PR段階で提示してくださる求職者さんが増えました!
吉岡: わー嬉しいですね!
根本: 今回の採用サイトを機に、新たに始めたカジュアル面談では、お申し込みいただいた方の大半が、面接までご応募いただくことに繋がっています。
吉岡: Beeさんと会話するだけで、Beeの良さって分かるし、とてもリラックスできて、自分がオープンになれる感じがします。そういうヒアリングの仕方をするとみんな自ら話してくれるのかなって、私も学ばせていただいています。

── 今後の展望について教えてください。

根本: 人と人が関わる中でこそ、弊社の強みや良さは最も発揮されると思います。だからこそ、面接や研修の場を大切にし、入社後も長く続けていただける環境を維持していきたいと考えています。
社内だけでは形にできないものとか、ない発想というのもたくさんあると思うので、今後ともfree web hopeさんのご意見を伺いながら、客観的に見た時にどう感じるのかとか、この形にするにはどうしたらいいかということは包み隠さずお話できるような関係性を築けています。
吉岡: まだ採用サイト以外のところでできることがあると思うので、月に1回イベントを開くとか説明会を開いて、魅力を発信できるような企画とかができたらいいなとは思っています。
根本: みんなお祭り事はやっぱり好きなんですよね。自分もやっぱり舞台に立ちたいって思っていた人たちがたくさんいるので、どんな形でもそういう企画をすることは割と好きかなと思います。


後日談

Beeさんとお話しするたびに、人と人のコミュニケーションとは何かを考えさせられます。相手の話を聞く姿勢、温かな反応、包み込むような語りかけ、すべてが勉強になりました。そして、いつの間にか私も緊張が解けて、心からBeeのみなさんを好きになっていました。もし音楽を習いたい方がいらしたら、迷わずおすすめしたいスクールです。

SERVICES & PRODUCTS

事業領域・提供サービス

CONTACT

お問い合わせ

マーケティングに関するご相談

  • 現状のデジタルマーケティング戦略を見直したい
  • 広告運用を改善したい
  • データ分析やデータ基盤の構築について相談したい
  • ブランドデザインについて相談したい