“SANUらしさ”を一緒に見つめ直す。 自然と過ごすをどう表現?

SANU
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"不動産サイトからの脱却。
自然の中で過ごす体験そのものを届ける"
古賀百合絵×吉岡沙織

SANU(サヌ)は人と自然が共生する社会の実現を目指すライフスタイルブランド。「Live with nature. / 自然と共に生きる」を掲げ、環境に配慮した開発・建築・運営を特徴とし、拠点が広がるほど日本の森が豊かになるリジェネラティブな仕組みを育みながら、現在34拠点・218室のシェア別荘「SANU 2nd Home」を運営している(2025年9月時点)。
共同所有型シェア別荘「SANU 2nd Home Co-Owners」という商品(サービス)をウェブでどう表現するか。ブランドの世界観と成果を両立するサイトをどう作るか。サービスの本格展開に向けたサイトリニューアルプロジェクトの全貌を語り合った。

話した人——
左 吉岡沙織 free web hope クリエイティブディレクター/ブランディングプロデューサー
右 古賀百合絵 SANU ブランドマーケティング部 部長


1. 6年目のSANU、情報設計とデザイン力を次のステージへ

古賀: これまでの4年間は、月額制のサブスクリプションサービスを中心に多くの方にご利用いただき、SANUを知っていただく大きなきっかけになりました。今回、新たにCo-Ownersという「別荘を共同で持つ」サービスに注力するタイミングを迎え、サイトも大きく進化させたいと思ったんです。
吉岡: サブスクリプションからシェア別荘への転換って、すごく大きな変化ですよね。
古賀: サブスクリプションを利用してくださっている方の多くは、日々忙しく働きながらも自然に通う時間を大切にされています。その中で「毎月は行けないときもあるけど、自然とつながる暮らしは続けたい」という声をたくさんいただいてきました。Co-Ownersは、まさにそうした声から生まれたサービスです。仕事や子育てで忙しいときでも、無理なく自然を楽しめるもう一つの選択肢として届けたいと思っています。

吉岡: 実は私、月額制のサービスを1年前に検討していました。たしかにそのときは「毎月行けるかな?」「損しないかな?」という不安がありました。Co-Ownersは価格的には月5.5万円から400万円台に上がるけれど、使い方としてはむしろハードルが下がったサービスということですね。
古賀: その通りです。その価値をどうやってサイトで体感的に伝えるかが、大きなテーマでした。これまで私たちは、お客様の声から生まれた複数のサービスを展開してきましたが、その積み重ねが結果として情報が複雑になっていたんです。。
私たちは常に、拠点の建物や案内ひとつまでデザインにこだわってきたからこそ、サイト制作でも情報設計とデザイン力の両方が必要と考えてました。
吉岡: ご連絡いただいた時、率直にとても嬉しかったです。心がざわざわしました(笑)同時に、自分の旅行に対する価値観とか自然が好きなところを活かせそうだなって。そもそも自分みたいな人がどうやったら「シェア別荘」っていう選択肢にたどり着くんだろう?って素直に考えられる立場だと思ったんです。

2. 初見の違和感が教えてくれたこと。

吉岡:最初にサイトを見た時の印象は率直に「不動産を買うサイト...?」という印象でした。私が知っているSANU 2nd Homeって「自然にどっぷり浸かって、自然を感じる」っていう記憶だったので、それが伝わってこなかった。
具体的には、建物の外観写真ばかりで、人が過ごしている様子が全然ない。「1口400万円」っていう数字がドーンと目に飛び込んできて、そこにばかり目がいっちゃう。それから「軽やかな別荘所有」っていう表現も気になって。「別荘所有」って重厚なイメージなのに「軽やか」って...なんかちぐはぐな感じがしたんです。
古賀: その指摘がすごく印象的で。私たちはSANUを不動産会社ではなくて、自然と共に生きる暮らし方を提案するライフスタイルブランドだって毎日色んな人にお話ししているのに、サイトがそうなってなかったんですよね。
吉岡: 元々SANUを知っているからこそのギャップもあると思うのですが、「自然の中で暮らす」という一番の魅力が伝わらなくなっちゃってる。これって、サイトの作り方の問題というより、ブランドが目指すものとサイトで伝えてることがズレてる問題だったんだなって思いました。

3. 実際の体験で気づいた。別荘って、こんなに身近なものだったんだ

吉岡: キックオフ後、河口湖 2nd に行かせていただきましたね。森の中にキャビンがあって、言葉を選ばずに言うと「自然しかない」という感じです。もうそれがすごく心地よかった。別荘って自分には縁遠いものだと思っていたのですが、建築自体も想像していたよりコンパクトで背伸びしている感じがしなかったのもよくて。

古賀: わー、嬉しいです!
吉岡: 初めて別荘を身近に感じることができました。人生の中で別荘を持つという選択肢が増えただけでも体験できてよかったです。
古賀: 別荘って限られた人が持つものというのが日本のイメージだと思うんですが、もっと気軽に手の届く範囲で検討できるものにしたくて。そう感じてもらえて嬉しいです。自分の「家」があると自然がもっと身近になるんですよね。私もCo-Ownersで八ヶ岳の拠点を購入しているんですが、八ヶ岳は私にとってもう第二の故郷みたいな感覚で。大雨などのニュースを見ると現地の様子が気になるし、車で向かうときは「ただいま」という気持ちになるんです。


4. セオリーを捨てる勇気。SANUらしさを問い続けた日々

吉岡: 実際に体験して「自然との適度な距離の近さ」がキーワードだと思いました。自然にすごく近いけどリゾートホテルほど豪華絢爛じゃない。でも快適。キャンプほど大変じゃないけどアウトドア体験もできる。そんなポジションってなかなかない。
それからSANUの方々へのヒアリングで気づいたのは、お客さんにとってシェア別荘は手段に過ぎないということ。目的じゃない。自然に触れる旅行や暮らしの延長線上に「シェア別荘」がある。だから「自然に没入する感覚」とか「そこで暮らしている自分の姿」がサイトで感じられることを一番大切にしようと思いました。とはいえ最後の最後まで何をどの順番でどの密度で伝えるかは悩みましたけど(笑)。

古賀: 本当に最後まで悩みましたよね...。この順番でいいのか、このコピーでいいのか、抽象的すぎないか、ありがちな表現になってないか、SANUらしいのか。
吉岡: セオリーで作ることもできました。でも「それでいいの?SANUさんが大事にしたいのってそこなの?」って自問自答の連続でした。古賀さんと、2人でちょこちょこ短時間のミーティングをして、お互いが考えていることをすぐ共有できたのはよかったです。
古賀: 単なるサイトだけじゃなく今後の営業や広報でも使えるものにしたかったので、コピーひとつとっても、私も考えて吉岡さんに見せて、吉岡さんにも考えてもらって一緒に作り上げましたね。
吉岡: 旅行サイトとか不動産サイトも参考にして、「どんな場所に、どんな物件があって、どんな体験ができるんだろう?」っていう自然な疑問に答えられるようにしました。
物件の紹介ページでも、一つ一つを丁寧に扱ってることが伝わるように、周辺環境とかそこでできる体験を詳しく紹介して、それぞれに魅力があることを伝えられるようにしました。


5. 写真が語る本当の価値

吉岡: SANU 2nd HomeのInstagramをみた時、この写真は本当に美しくて、ここに全てが詰まっていると感じました。この写真はただ大きく見せるだけじゃなく上手な切り取り方でたくさん使おうと。
行ったからこそ、わかりますが、写真に嘘がない。大袈裟な写真は世の中にたくさんありますが、写真の印象そのままで、好感度もありましたね。
古賀: 写真を見た時に「そうだ、自然に行きたい」という気持ちって、都市部で働いてる人たちにアプローチする上ですごく重要なんです。私たちが大切にしている建物は、あくまで自然を楽しむための”白い器”。場所や季節ごとに異なるその先の景色とか、そこで過ごす体験そのものがサービスの根幹なので。


吉岡: 写真を踏まえて、デザインは高級感を演出しようというより値段に見合う価値を感じてもらうことが大事だと思いました。ただ写真を大きく見せるだけじゃなくSANUらしい色を活かして手作り感も残すようにしています。大胆に写真を使いつつレイアウトに余白や抜け感を作ることで、情報が理解しやすくて機能的であることも意識しています。自然への憧れを感じながらも実際に行動を起こしてもらえるサイトができました。


6. クライアントを超えた関係性。一緒にサービスを育てる喜び

古賀: 制作を進めていく中でfree web hopeさんには本当に粘り強くサポートしていただきました。サイトの構成について大きな方向転換をしたときも事業のことをちゃんと理解してくれていたから課題に寄り添った提案をしてくれて。
あとすごくレスポンスが早くて。何時に連絡してもすぐ返事をもらえました。それから弊社のエンジニアが吉岡さんとやりとりを直接していて「あの人は何者だ!何であんなに技術的な会話ができるんだ!」って言っていました(笑)。
吉岡: 古賀さんの説明がディズニーランドのキャストさん並みに聞いていて楽しくて(笑)。ミーティングのたびに情熱が伝わってくるので、お客さんという感覚より一緒にサービスを盛り上げていこうという気持ちが強かったです。スケジュール的にはタイトで大変だったと思いますが制作メンバー全員が「やってよかった楽しかった」って思ってくれているはずです!
古賀: free web hopeさんは「自分が買うとしたら」「利用者だったら」という目線で話し合ってくれて。お客さんのサービスというより、もっと踏み込んだ関係性で見てくれました。


7. 愛犬は家族の一員。だから「ペット可」ではなく「家族で楽しめる」を目指した


古賀: 広告を運用していて面白い発見があったんです。愛犬がベッドの上で駆け回っている投稿動画がすごく伸びていて、「愛犬家」の方にとっていいニーズがあるのかも、と仮説を立てました。
愛犬と旅行となると、ホテルは制約が多く、愛犬がストレスを感じていないか心配になったり、愛犬と一緒に自然を楽しみたいけど選択肢がすごく限られているんですよね。
吉岡:愛犬家の方にとって、愛犬は家族の一員、なので「ペットを連れて行ける場所」ではなく「家族みんなが心から楽しめる場所」として考えました。「山と海と、愛犬と。自然の中のシェア別荘」というメインコピーも、そんな想いから生まれました。
感情に訴える部分と、論理的な説明のバランスも意識しましたね。まず「愛犬との特別な時間」をイメージしてもらって、その後で「月々3万円からの所有」「管理不要」といった具体的なメリットを説明する構成にしました。
古賀:結果として、広告効果は想像以上でした。数字的にも大幅に向上しました。特定のターゲットに向けて真剣にメッセージを作ると、こんなに響くんだって実感しましたね。

8. 数字だけじゃない、社内から聞こえた「らしいね」の声。

古賀: これまでSANUって検索すると一番上に表示されていたサブスクリプションのページを今回作ったCo-Ownersを主軸としたサイトに変更したんです。これはすごく大きな決断でCo-Ownersを期待していないお客様も多数いる中で検索した人の期待に応えられるのかなってすごくドキドキしていました。結果的にはサイトへの流入数が大幅に増えて資料請求も増えた。何より社内から「新しいサイトいいね」「SANUらしいね」って声をもらえて営業チームからも「お客さんに説明しやすくなった」って言ってもらえました。
吉岡: わー、良かった!数字で結果が出るのも嬉しいけど、社内の皆さんに「SANUらしい」って言ってもらえたのが一番嬉しいですね。

9. これから実現したい未来の話

古賀: 大きく2つの方向性があります。一つは、何度見ても楽しいサイトにしていきたいということ。別荘を買うって人生に1、2回あるかないかの大きな決断なので、何度もサイトを訪れながら「いつ買おうかな」とワクワクしている方も多いはず。最初のきれいさや楽しさだけじゃなくて、読んでて、触ってて面白いって思えるサイトに育てていきたいです。
もう一つは、今回メインに取り上げたCo-Owners以外にも、ライフステージに合わせて色んな関わり方ができることが私たちの魅力なので、サービス全体が分かるサイトに進化させたいということ。例えば大学生が見た時にも「私にはまず一泊のお試し宿泊が合ってそう」って気づいてもらえるような誘導ができるといいなって。
吉岡: シンプルにSANUの魅力をもっと伝えたい。SANU 2nd Homeを使ってる人にインタビューして、その記事を書いて魅力を発信したいのと、純粋にどんな活用をしているのか、どんな体験ができるのかを知りたいんです。
SANUのコミュニティの中で、レストランとかの情報をシェアしてみたり...そういう楽しみ方もできそうですよね。
古賀: それいいですね!実際に会員さんの間では、「あそこのパン屋さん美味しかったよ」とか「この季節はここがおすすめ」みたいな情報交換がよく起こってて。そういうのをサイトでも表現できたら、もっとSANUらしさが伝わりそう。
それから、季節ごとに変わるサイトっていうアイデアも出てて、夏に見る景色と冬に見る景色が全然違うとか、その時々の自然を本当に映し出せるようなものも実現できそう。
まずはこの一つ目のプロジェクトでしっかりご一緒できたことに感謝していて、Co-Ownersや愛犬家向けランディングページのみならず、いろんなサイトの制作をこれからもやっていきたいですし、引き続きお世話になろうと思っています。


編集後記
SANUさんとの出会いから、はや半年以上。SANUの皆さんが「SANU」を本当に愛していることが日頃からひしひしと伝わってきます。古賀さんをはじめ、SANUのみなさまが、お客様のために、事業のために、常にサービスを良くしようと考えている姿勢に影響を受けました。
さまざまな支援に携わっていますが、最終的にはクライアント自身がサービスとお客様にどれだけ真剣に向き合っているかが鍵だと思う。SANUとの仕事は、それを改めて実感させてくれた。

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